『教室の悪魔』ポプラ社発刊で、現代のいじめの実態をあらわにされた、
山脇由貴子先生の講演会に参加させていただきました。
1時間40分という短い時間の間でしたが、
山脇先生は早口に、今、子どもたちを苦しめているいじめの実態、真実、その残酷さ、
望ましき解決方法などについて語ってくださいました。
かなうなら、『教室の悪魔』を丸ごと転記したいほどなのですが、著作権に引っ掛かると思いますので、
せめて講演会で得た情報だけでもここに記しておきたいと思います。
この講演会の内容の記事については、長くなりますので、数回に分けて掲載させていただきます。
出来るだけ多くの大人の方々に、一緒に考えて、
それぞれの地域でいじめをなくす運動、いじめをさせない運動に携わっていただきたいと願っています。
ぜひ、最後までお付き合いください。
よろしくお願いいたします。
教室の悪魔
山脇 由貴子先生プロフィール
1969年東京生まれ。
横浜市立大学心理学専攻卒。
現在、東京都児童相談センター・心理司。年間100家族以上の相談や治療を受け持つ。
ストリートチルドレンの急増するベトナム政府から依頼を受け、
児童相談所のスタッフ養成のための講演を行うなど、国内外を問わず幅広く活躍。
また、新聞や雑誌への寄稿を通し、臨床現場の生の声を発信し続ける、
いまもっとも注目される若手臨床家
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
現代のいじめ
~今、大人にできること~
蛇足として、先生はまずはじめに、
『教室の悪魔』が発刊されたいきさつを語ってくださいました。
一昨年10月~11月をピークに、子どもたちの自殺が相次いで、社会問題になったことは、まだ記憶に新しいと思います。
そうした報道の中に、『いじめられる側も悪い、いじめで命を絶つなんて弱い』などと、実態を知らずに発言する大人たちが多いことに衝撃を受けられ、
これは大人たちに事実を教えなければ、との気持ちから、同年12月、1週間余りで書き上げたものだそうです。
なぜ、そんなに急いだのか。
マスコミや社会は飽きやすく、今、問題視していても、喉元を過ぎれば関心を失ってしまう。
お知り合いの新聞記者に「とりあげるなら、今しかない」と後押しされたことも手伝って、
本業の合間に書き上げられました。
12月月初旬に執筆を始めたものが、12月22発売。
発刊したポプラ社は、元来、本来児童文学を発刊していた会社でした。
「わが社は、子どもたちに育ててもらった会社です。子どもたちの危機に際し、今、動かないと」
との思いから、通常ではありえない、入稿から2週間足らずでの『教室の悪魔』発行に繋がりました。
タイトルに使った、『悪魔』には、反発がでることも予測し、悩まれたそうです。
他の例として「大人の知らないイジメの常識」というのも挙がったそうです。
でも、『いじめ』という言葉を使ってしまうと、現代のいじめの特徴的な、
犯罪とも呼べる『悪質さ、残酷さ』が伝わらない。
子どもたちの世界では『いじめ』でまかり通っている行為であっても、
大人の世界では犯罪で検挙されるような事例ばかりです。
そうしたことを考えに考えて、『教室の悪魔』が誕生しました。
子どもたちは、大人がいじめを許さないことなど、とっくに知っています。
とっくにわかっています。
では、なぜ、そうしたことがわかっていても、いじめはなくならないのか?
山脇先生は、「いじめはウイルス、心の疫病のひとつ」とおっしゃいました。
ウイルスですから、子どもたちはいつのまにか感染します。
疫病ですから、いじめ根絶のためには、治療が必要になります。
現代の子どもたちは、成長する過程で、善悪の判断をしっかりと叩き込まれます。
しかし、いじめが発生する社会においては、善悪の認識能力を研ぎ澄ましたままでは生きられない。
なぜなら、正論を出すことによって、次は自分がターゲットになってしまう恐怖があるからです。
だからこそ、こどもたちは善悪の認識能力をわざと低下させ、
いじめの加害者と被害者という対立ばかりではなく、
そこに『傍観者』という新しい加害者を作り出してしまった。
それこそが、現代のいじめの特徴であるとも言えます。
傍観者は、最後まで傍観者でいることなどできません。
ある先導者が「クラス内全員、一人ずつ『死ね』と言う」というルールを決めると、
言いたくないがためにトイレに隠れようと、早退しようと、
ルールを守るまでは周囲から攻め続けられます。
挙句、言わないままでは、次は自分がいじめのターゲットとなってしまうという恐怖。
こうしたクラス内のいじめ発症が元となって、
不登校になってしまう繊細な子もいるそうです。
子どもたちは、大人がいじめを許さないことなど、とっくに知っています。
とっくにわかっているんです。
だから、いじめはあくまでも、大人が気付かないように行われます。
いじめをわかりにくくしている原因の一つに、被害者がいじめの恐怖に洗脳され、
加害者の『隠そう』とする意図に協力してしまっている現状が挙げられます。
次回はこの
『被害者がいじめの恐怖に洗脳され、加害者の『隠そう』とする意図に協力してしまっている現状』
から続きます。
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